TOUCHSTONE GAME/TOUCHSTONE
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ワルフマンジャックがSPINさせる!
『DJ WARUDA SPINERS』
はコチラから聞く事ができます!!
(アクセスして【LISTEN】をクリック)
タバコを銜えると口元が痛んだ。ちくしょう、切れてやがる。

「悪いけどもうウチで回してもらうことはないと思うよ。
   流石に、客と喧嘩されちゃマズイから。はい、これ」

オーナーが封筒を差し出した。俺はそれを押しやった。

「いや…もらえないっスよ。」

「気持ちだから取っとけよ。今日の選曲良かったから。」

そう言いながら俺の上着のポケットに封筒を捻じ込むと、
オーナーは店に入って行った。

血の滲んだタバコに火をつけながら塀にもたれた。

ワルフマン・ジャックって…この世界じゃそこそこ名前も売れてきたものの、楽しくないんだよ、
なんか最近。ジュッと小さな音がしてタバコの火が消えた。

ちくしょう、雨だ。
思うが早いかザアザア降ってきやがる。こんな気分でずぶ濡れはあまりにもミジメだろ。

どっか入れる店を探そう。通りを小走りに駆け抜けて、路地を入ったところに看板を見つけた。

『CLUB TOUCHSTONE GAME』

ん?こんな店、あったっけか…?

雨が、一段と激しさを増した。

もはや選択の余地ナシ。俺は吸い込まれるようにその店のドアを開けた。
うをっ、目が痛ェ…と思ったらミラーボールか。ここはクラブか?フロアでは客がめいめいに踊
っている。流れているのは、ファンカデリック…

そっち系の店なのか。

そう思いつつも、フロアにあるステージが気になった。
それはちょっとしたライブハウスほどの大きさで、明らかにDJブースよりも幅を利かせているよ
うだった。

ライブハウスなのか?
まぁ、いい。雨がしのげればいいんだ。

とりあえず酒でも飲んで仕切り直しだ。
カウンターに腰掛けて中の女に言った。

「ビール。」

「あら、雨降ってきたのね」

30位かな、いや、もうちょい上か。ちょっと退廃的な香りがする美人だ。
でも相当気が強そうだな…漠然と女を眺めていた。

「はい、ビール。あんたアタシを値踏みする気?千年早いわよ。」

グラスを乱暴に置くと、女が言った。女のギロと鈍く光る目に、思わず視線を逸らした。

何だこの女。俺は焦りながらも平静を装って切り出した。

「この店クラブっすか、ライブハウスっすか?」

「どっちでもあるしどっちでもないわよ」

「は、はぁ…」

ますます訳がわからない。

「どうせ見るならあっち見なさい」

女が示した方を見ると、ステージで黒ずくめにリーゼントの男たちが徐に演奏を始めた。

ロカビリーバンド?

ウッドベースの音が小気味よく、気付けば3杯目のビールを飲み干していた。

っていうか、何だよこの店。ジャンルバラバラじゃねーか。
ポリシーはないのか。

「楽しけりゃ、いいじゃない」

またあの女だ。ショットグラスを俺の前に置いて言った。

「これ、頼んでないけど。」

「サービスだから黙って飲んで」

「あ、どうも。」

透明な液体だから中身はテキーラかウォッカか。変なモン混ぜちゃいないだろうな。

「飲まないの?別に毒なんか入っちゃいないわよ」

女はそう言うとグラスを奪って飲んでしまった。

結局自分で飲むのかよ。



「オイ、まだ踊らねえのかよ!」

「あ?」

声のする方に目をやるとDJに坊主頭の男が絡んでいた。

あ、DJ女だったんだ…しかも結構カワイイ。

「早く踊れよ」

「うるさい」

「音楽なんかいいから出て来いよ」

坊主の男がカワイイDJの手を掴んだ。

「音楽なんか?出てけよ、このハゲ!」

掴まれた手を振り解き、坊主男を殴った。

しかもグーで!

坊主男が床に沈んだ。

か、カッコいい。

お客も超盛り上がってる。

でも、この子やっちゃったよ。あーあ、可哀相に。俺みたいにクビだろうな。

「ダニー、外出しといて。」

DJの子がそう言うと、ベイダーみたいな白人が坊主男を担いで行った。

「ママ!」

その子が俺の前のカウンターの女に向かって投げキッスした。
ママと呼ばれた女は、唖然として見ている俺に、

「不愉快な客はウチには要らないんだよ。」
と言うと、ウィンクした。

「あの子、今日までなのよ。」

「やっぱりクビ?」

「まさか。ブロードウェイで踊れる事になったんだって」

「ブロードウェイ?あぁ、だからさっき踊れって…」

「そう。そっちが本業なの。よかったわね、間に合って。最後に躍らせてあげてくれる?」

「は?俺はダンスなんか…」

「馬鹿だね、音楽かけてって言ってんのよ。DJなんでしょ?」

「えっ?何でそれを?」

「いいから早く。頼んだわよ。」

何がなんだかよくわからないまま、俺はブースに向かった。
フロアを見渡すと、みんなスゲーイイ顔してる。酒を片手にユラユラ揺れてる奴、
踊りの上手な女の子、それに見惚れ気味で足元をふらつかせてる奴…みんな楽しそうだ。

やっぱりここから見る景色が、俺は大好きだ。
よし、もっと盛り上がってくれ。
俺が流す曲に合わせて、さっきのDJの子と数人の女の子がステージで踊りだした。
ますます沸き上がるフロア。

やっぱりイイわ、

この感覚。



 それ以来、俺はこの店で回し続けたが、再開発の立ち退きで店はクローズすることになった。
店の存続の為に皆奔走したのだが、残念ながらそれは叶わなかった。

常連客達が思い出話を頻繁にするせいか、店は一部で伝説化した。

その後俺はロンドンへ渡り、店の仲間とも連絡が途絶えた。



あれから10年…何かにつけて思い出すのは、あの店での楽しい記憶ばかりだった。

久し振りに日本に帰ると、懐かしい出会いが待っていた。

「ワルフマンジャック?」

道端で声をかけてきた女には見覚えがあった。

ブロードウェイに行ったミキだ。

偶然の再会を喜ぶより先に、彼女は言った。

「あの店、復活するんだって!」

…どうしよう、アドレナリンが止まらない。


このお話は、フィクションみたいなものです。続きは、5月5日『CLUB TOUCHSTONE GAME』にて

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