【コメント】
夏である。「キャッホーッ!夏休み!」
はしゃいだ君とビーチやマウンテン、挙
句は海の向こうまでランdeヴー…。
そんな過ごし方、理想ですね。理想的な
夏休みですね。でも、夏休みだからって
旅に出られない人もいっぱいいます。仕
事に忙殺されていて、夏も冬もない。極
端に暑さに弱く、クーラーの効いた部屋
から一歩も出られない。時間は腐るほど
あるが、単純に金がない。そんな人たち
に夏休みの過ごし方として提案するのが、
『その場トリップ』である。夢想ともい
う、空想ともいう。要は想像力で旅をし
よう、というだけの話である。そしてそ
の手引書として選んだのが、今回の一冊、
佐藤和歌子「間取りの手帖 remix(ちく
ま書房)」である。間取り収集家という
肩書きを名乗る著者が、収集し厳選した
間取り図が並び、その間取りに一言のキ
ャプションがついているというかなりシ
ュールな本である。
あなたはお部屋探しの経験はあるだろう
か?お部屋探しはロマンである。家賃、
立地条件、広さ、そして間取り。それら
の塩梅をすり合わせながら、できる限り
好条件の物件をゲットするのである。不
動産屋の壁面に貼ってある、あの図面で、
誰でも一度は間取り図を目にしたことが
あるだろう。このシステムというのは、
どういう訳か今も昔も全くもって変わっ
ていない。私は以前、不動産業に携わっ
ていたのだが、何せこの業界はかなり遅
れている。世のIT化の波も、遠くの津波
のように時間差でしかもひっそりとやっ
てきていた。最近ではネットも当たり前
になってきたが、いかんせん図面はその
まま紙ベースというのがまだまだ常識で
ある。そんな間取り図、言わずもがな平
面図である。そこがまた想像力を掻き立
てるのだ。写真だとそのままを受け入れ
るしかないが、平面図だと柱の一本から
壁の色に至るまで限りなく自分の想像の
赴くまま、である。絵本よりも字が少な
い間取り図ばかりのこの本はタイトルに
あるとおり、本というよりは手帖なのだ。
読むとこねぇよっ!と突っ込まれること
必至の仕様。このコーナーのタイトル
「本読めよ!」で紹介するにはいささか
気が引けなくもない。しかし、この本を
私は本でも手帳でもなく、『その場トリ
ップ』のガイドブックとして紹介してい
ることをご理解いただきたい。キャプチ
ャーの存在が「写真で一言」を彷彿とさ
せ、まさに「間取りで一言」のようだが、
正直キャプションは面白くないので、間
取りに集中してほしい。間取りに思いを
馳せ、なぜココに、こんな窓があるのか、
この壁はなぜ作られる必要があったのか、
そんなきっかけからいくらでも想像の翼
を広げて旅立っていけるのです。星矢、
セブンセンシズに目覚めるのです…そん
な沙織さんの声は聞こえないかもしれま
せんが、大いに想像力を発揮してペガサ
スのように今こそ羽ばたいていただきた
い。この間取りを選ぶ人はどんな人で、
その人はこの収納をどう使うのだろうか。
又は、もしも自分がここに住んでいたら、
でもいいし、もしもあの人とここに住ん
だとしたら…というウキウキした観点か
ら楽しむのも尚良し。人の家に遊びに行
ったって、そうそう全室じっくり見て回
ることはできないのだけれど、この本の
間取り全部をクリアすると、108室も渡
り歩くことができるのだから結構魅力的
でしょ?煩悩と同じ数なのはご愛嬌で。 |
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